F-1の学校変更(Transfer)完全ガイド|失敗しないI-20移管

アメリカ留学中に「学校が合わない」「別の学校に行きたい」と感じることがあります。F-1学生ビザでの学校変更(Transfer)は可能ですが、正しい手順を踏まないと違法滞在になったり、再入国できなくなるリスクがあります。この記事では、SEVISシステムでのTransferの仕組み、I-20移管の手順、注意点まで徹底解説します。
この記事でわかること
- F-1 Transferの基本的な仕組み
- Transfer out(旧校からの手続き)
- Transfer in(新校への手続き)
- Release Dateとは何か
- 成績・財務の扱いと注意点
- Transfer中の旅行リスク
- 旧校→新校のタイムライン
Transfer(学校変更)とは?
Transfer(転校)は、F-1学生が現在の学校(SEVIS認定校)から別のSEVIS認定校に移ることです。正式なTransfer手続きを経ることで、SEVIS IDを継続でき、新たなSEVIS費用の支払いが不要になります。
Transferの基本情報
- SEVIS IDの継続:正式なTransferではSEVIS IDが変わらない
- SEVIS費用:再支払い不要($350節約)
- ビザステータス:F-1ステータスを維持できる(手続きが正しければ)
- Grace Period:旧校のプログラム終了後60日以内に新校で授業開始が必要
Initial AttendanceとTransferの違い
初めてアメリカに入国する際の学校入学はInitial Attendanceと呼ばれ、Transferとは異なります:
- Initial Attendance:新しいSEVIS ID、SEVIS費用支払い必要
- Transfer:既存のSEVIS IDを継続、SEVIS費用不要
SEVISシステムでのTransferの仕組み
TransferはSEVIS(Student and Exchange Visitor Information System)上で管理されます。旧校と新校の両方のDSO(Designated School Official)が協力して手続きを進めます。
SEVIS上の2つの手続き
1. Transfer Out(旧校からの移管)
現在の学校から出る手続きです:
- 学生が新校への入学を決定し、旧校のDSOに通知
- 旧校のDSOがSEVIS上で「Transfer Out」処理を実行
- Release Dateを設定(この日からSEVIS管理が新校に移る)
- 旧校のI-20が終了し、SEVIS Statusが「Transfer Out」に変更
2. Transfer In(新校への受け入れ)
新しい学校に入る手続きです:
- 新校が学生を入学許可し、I-20を発行する意思を表明
- 新校のDSOがSEVIS上で「Transfer In」処理を実行
- Release Date以降、新校がSEVIS管理を開始
- 新校が新しいI-20(Transfer-in用)を発行
Release Date(リリース日)とは
Release Dateは、旧校がSEVISレコードを「解放」して新校に管理権を移す日付です。この日付が非常に重要です:
Release Dateの設定ルール
- 通常、学生の最終出席日またはプログラム終了日に設定
- Grace Period(60日)内に設定される必要がある
- Release Date以前は旧校がSEVIS管理、以降は新校が管理
Release Date前後の違い
| 項目 | Release Date前 | Release Date後 |
|---|---|---|
| SEVIS管理 | 旧校のDSO | 新校のDSO |
| 有効なI-20 | 旧校のI-20 | 新校のI-20 |
| 住所変更届先 | 旧校のDSO | 新校のDSO |
| 就労許可 | 旧校での規定 | 新校での規定 |
Transfer手続きの完全タイムライン

| タイミング | やること | 担当者 |
|---|---|---|
| 3〜6ヶ月前 | 新校の入学要件確認、出願準備、財政証明準備 | 学生 |
| 2〜3ヶ月前 | 新校に出願、入学許可を取得 | 学生 |
| 1〜2ヶ月前 | 旧校のDSOにTransfer意思を通知(Transfer Out Formを提出) | 学生 |
| 1〜2ヶ月前 | 新校にTransfer In申請、必要書類提出 | 学生 |
| 最終出席日 | 旧校での授業終了、成績証明書取得 | 学生 |
| 最終出席日 | 旧校のDSOがSEVIS上でTransfer Out処理、Release Date設定 | 旧校DSO |
| Release Date後 | 新校のDSOがSEVIS上でTransfer In処理 | 新校DSO |
| Release Date後 | 新校が新しいI-20(Transfer-in用)を発行 | 新校DSO |
| 60日以内 | 新校で授業開始(Grace Period内に開始必須) | 学生 |
| 15日以内 | 新校への住所変更届(AR-11)提出 | 学生 |
Transfer前に確認すべき事項
1. 成績(GPA)と単位取得状況
成績が悪い場合、Transferに大きな影響があります:
- 新校の入学要件:多くの学校は最低GPA 2.0〜2.5を要求
- 成績証明書の発行:成績不良の場合、旧校が成績証明書発行を拒否する可能性
- Academic Probation:停学中や退学処分の場合、Transfer不可
- SEVIS Status:成績不良でSEVISがTerminatedされている場合、Transferではなく再申請が必要
⚠️ 成績に問題がある場合は、Transfer前に旧校で成績を改善することを強く推奨します。
2. 学費その他の未払い金
未払い金がある場合、Transferできません:
- 授業料・寮費:全額支払い完了が必須
- 図書館の延滞料金:小さな金額でも清算が必要
- 医療費:学校の保険でカバーされない部分も清算
- 成績証明書:未払い金がある場合、Hold(保留)となり発行されない
- SEVIS Release:未払いがあるとDSOがSEVISをReleaseしない
⚠️ Transfer前に必ず学校のアカウントをチェックし、全ての未払い金を清算してください。
3. 単位の移行(Transfer Credit)
新校が旧校の単位をどれだけ認めるかを事前に確認します:
- 単位評価:新校のAdmissions Officeに単位評価(Credit Evaluation)を依頼
- コース内容の比較:シラバスの提出を求められることがある
- 最低単位:多くの学校は卒業単位の50%以上を自校で取得することを要求
- 認定されない単位:ESLや職業訓練コースは認定されないことが多い
4年制大学への編入について詳しくは、4年制大学への編入完全ガイドをご覧ください。
4. 財政証明(Financial Documents)
新校は新しいI-20を発行する前に、財政証明を要求します:
- 残高証明書:新校の授業料+生活費1年分以上の残高
- 発行日:通常3〜6ヶ月以内のもの
- スポンサーレター:両親や親族からの支援を証明する書類
- 奨学金:奨学金を受ける場合は証明書が必要
Transfer手続きの詳細ステップ
ステップ1:新校への出願と入学許可
- 新校のTransfer出願締切を確認
- 出願書類を準備(成績証明書、推薦状、エッセイなど)
- オンライン出願を提出
- 入学許可(Acceptance Letter)を受け取る
ステップ2:旧校でのTransfer Out手続き
- International Student Officeに予約を取る
- Transfer Out Form(学校により名称が異なる)を記入
- 新校からのAcceptance Letterのコピーを提出
- 最終出席日を報告
- DSOがSEVIS上でTransfer Out処理を実行(Release Date設定)
- 成績証明書を取得(Sealed Envelopeまたは電子送信)
ステップ3:新校でのTransfer In手続き
- 新校のInternational Student Officeに連絡
- Transfer In Form(SEVIS Transfer Form)を記入
- 必要書類を提出:
- 旧校のI-20(コピー)
- 旧校の成績証明書
- パスポート(コピー)
- I-94(プリントアウト)
- 財政証明書
- DSOがSEVIS上でTransfer In処理を実行
- 新しいI-20(Transfer-in用)を受け取る
ステップ4:新校での授業開始
- 旧校のプログラム終了後60日以内に新校で授業開始
- オリエンテーションに参加(Transfer学生向けの場合もあり)
- 履修登録を完了
- DSOに出席を報告(Check-in)
Transfer中の旅行(出国)リスク
⚠️ Transfer手続き中の旅行は非常にリスクが高い
Transfer手続き中にアメリカを出国すると、再入国できなくなる可能性があります。特に以下の期間は出国を避けてください:
- Transfer Out処理後〜新I-20受領前:SEVIS StatusがTransfer Pendingまたは不明確な状態
- 旧I-20終了後〜新I-20受領前:有効なI-20がない状態での出国は再入国拒否のリスク
- 新I-20受領後〜授業開始前:Travel Signatureがまだ無効な期間
やむを得ず旅行する場合の注意点
緊急の用事でどうしても出国が必要な場合:
- 新I-20を必ず受け取る:出国前に新校から新しいI-20を受領
- Travel Signatureを取得:新校のDSOにTravel Signatureを依頼
- 両方のI-20を携行:旧校と新校のI-20両方を持参
- 入学許可証を持参:新校からのAcceptance Letterも携行
- 成績証明書:旧校の成績証明書(Sealed)も携行を推奨
- 財政証明:新校での資金証明も用意
推奨:Transfer完了まで待つ
可能な限り、Transfer手続きが完全に完了し、新校で授業が始まってから旅行することを強く推奨します。入国審査官によっては、Transfer中の学生の再入国を認めないケースがあります。

よくあるトラブルと対処法
❌ トラブル1:旧校が成績証明書を発行してくれない
原因:未払い金がある、成績不良、図書館の未返却本など
対処法:すべての未払い金を清算し、未返却物を返却。それでも発行されない場合は、学校のオンブズマンに相談。
❌ トラブル2:旧校のDSOがSEVISをReleaseしてくれない
原因:手続きの遅延、未払い金、書類不備
対処法:DSOに何度も連絡し、必要な書類を再確認。それでも進まない場合は、SEVISヘルプデスクに相談。
❌ トラブル3:Grace Periodが切れそう
原因:手続きの遅延、新校の開始日が60日を超える
対処法:新校に緊急で連絡し、早期入学の可能性を相談。場合によっては、一旦帰国してInitial Attendanceとして再入国が必要。
❌ トラブル4:Transfer中に出国してしまった
原因:手続きのタイミングを誤解、緊急帰国
対処法:すぐに新校のDSOに連絡し、新I-20とTravel Signatureを緊急発行してもらう。最悪の場合、新しいビザ申請が必要。
❌ トラブル5:新校が単位をほとんど認めてくれない
原因:事前確認不足、コース内容の相違
対処法:Academic Advisorに相談し、シラバスを提出して再評価を依頼。Appeal(異議申し立て)プロセスがある学校も。
Transfer vs 新規申請(Initial Attendance)
| 項目 | Transfer | 新規申請 |
|---|---|---|
| SEVIS ID | 継続(変わらない) | 新規発行 |
| SEVIS費用 | 不要 | $350支払い必要 |
| ビザ更新 | ビザが有効なら不要 | 新しいI-20で更新可 |
| 手続き期間 | 60日以内に完了必須 | 制限なし |
| 出国の影響 | 手続き中は高リスク | 新I-20とビザがあれば問題なし |
| 適用ケース | F-1ステータス維持中の学校変更 | F-1失効後、長期ギャップ後 |
Transferのまとめ
Transfer成功のための5つのポイント
- 早めに計画:3〜6ヶ月前から準備を始める
- 成績と財務を整理:未払い金を清算し、成績を確認
- DSOとの密な連絡:旧校・新校両方のDSOと頻繁にコミュニケーション
- 60日ルールを厳守:Grace Period内に新校で授業開始
- 旅行は避ける:手続き完了まで出国しない
参考リンク
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よくある質問
最終更新日:2025年10月14日
監修:NewMe留学 編集部|アメリカ留学サポート専門チーム。F-1ビザ申請から入学手続き、現地サポートまで一貫して対応。過去500名以上の留学実績。